睡眠障害(主に不眠症)について
不眠症とは、寝つきが悪い、途中で何度も目が覚める、朝早く目覚めてしまう、ぐっすり眠れたという感覚が得られないといった睡眠の問題が週に3回以上、3か月以上続き、日中の疲労感や集中力の低下、イライラなどの支障をきたす状態です。
ストレスや生活リズムの乱れ、心配事などがきっかけとなることが多く、はじめは一時的な不眠でも、「眠れないのでは」という不安が新たなストレスとなり、慢性化することがあります。几帳面な性格の方や、心身の病気を抱えている方に生じやすい傾向があります。
適切な治療により多くの方で改善が期待できますが、放置すると生活の質が大きく低下し、うつ病などの精神疾患や生活習慣病のリスクも高まるため、早めの相談が大切です。
こんな症状でお困りではありませんか?
- 布団に入っても30分以上寝つけない日が続いている
- 夜中に何度も目が覚めて、そのたびになかなか眠れない
- 朝4時・5時に目が覚めてしまい、その後眠れない
- たっぷり寝たはずなのに疲れがとれない
- 日中に強い眠気があり、仕事や家事に支障が出ている
- 集中力が続かず、仕事や家事でミスが増えた
- 眠れないことへの不安で、夜が来るのが怖いと感じる
- 市販の睡眠薬やアルコールに頼って寝ている
このような状態が続いている場合は、一度ご相談ください。不眠は我慢しているうちに慢性化してしまうことが少なくありません。とくに、不眠をきっかけにうつ病を発症するケースもあるため、早めの受診をお勧めいたします。
不眠症のタイプ
不眠症には大きく分けて4つのタイプがあります。
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 入眠困難 | 寝床に入ってもなかなか寝つけない |
| 中途覚醒 | 夜中に何度も目が覚めてしまう |
| 早朝覚醒 | 予定よりもずっと早く目が覚めて、その後眠れなくなる |
| 熟眠障害 | 睡眠時間は確保できているのに、十分に眠れた感じが得られない |
これらが単独で現れることもあれば、複数のタイプが重なることもあります。どのタイプに該当するかによって治療のアプローチも変わってきます。当院では、初診時に睡眠の状態を丁寧にお伺いし、それぞれの患者さんに合った治療方針を一緒に考えていきます。
当院での治療について
睡眠に関する悩みは、体や心の健康に深く関わる重要な問題です。当院では、睡眠衛生指導・認知行動療法の考え方・薬物療法を組み合わせ、話し合いながら丁寧に治療を進めていきます。
1. 睡眠衛生指導
不眠症の治療は、まず睡眠習慣の見直しから始めます。就寝・起床時刻を一定にする、寝る前のカフェインやアルコールを避ける、日中に適度な運動をするなどの睡眠衛生指導が治療の基本となります。
2. 認知行動療法(CBT-I)の考え方
あわせて、不眠に対する認知行動療法(CBT-I)の考え方を取り入れた関わりを行っています。CBT-Iは不眠症に対する第一選択の治療とされており、睡眠に対する誤った考え方(「8時間眠らなければならない」「眠れないと体が壊れる」など)を見直し、眠れない時の対処法を身につけていく治療法です。
寝床で過ごす時間の調整(睡眠制限法)や、寝床を「眠る場所」として再学習する方法(刺激制御法)などについて、診察の中で助言を行っています。
3. 薬物療法
薬物療法が必要な場合には、依存性の少ない安全性の高い薬剤を中心に選択します。オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬など、従来のベンゾジアゼピン系薬剤と比べて依存形成のリスクが低い薬剤を優先的に使用し、漫然とした長期処方を避けるよう心がけています。必要最小限の期間で使用し、段階的に減らしていくことを目標としています。
★ 当院で新たに処方しない薬剤について
マイスリー(ゾルピデム)、ハルシオン(トリアゾラム)、フルニトラゼパム(サイレース・ロヒプノール)、デパス(エチゾラム)は、睡眠薬の中でも特に依存性が高く、高齢者の方々には転倒やせん妄等のリスクを伴います。そのため、特別な事情がない限り、当院ではこれらの薬を新たに処方いたしません。
これらの薬をやめたいけどどうしたらいいかわからない、とお悩みの方は、ぜひご相談ください。
不眠症の背景には、うつ病や不安障害などの精神疾患が隠れていることもあります。必要に応じて原因となる疾患の精査・治療も並行して行いますので、「ただ眠れないだけ」と思わず、お気軽にご相談ください。あなたに合った最適な睡眠のあり方を、一緒に見つけていきましょう。
参考資料
厚生労働省が2023年に新しい睡眠ガイドを公表しています。とても参考になるので、興味のある方はご覧ください。
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(PDF)
よくあるご質問
当院では依存性の少ない新しいタイプの薬剤を中心に使用しています。オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬は、従来のベンゾジアゼピン系薬剤と比べて依存形成のリスクが低いとされています。また、薬物療法だけに頼らず、睡眠衛生指導やCBT-Iの考え方を併用することで、最終的には薬を減らしていくことを目標としています。
不眠がいつ頃から始まったか、どのような睡眠パターンか(寝つきが悪い・途中で起きるなど)、日中の生活への影響、現在服用中のお薬、カフェインやアルコールの摂取状況、仕事や生活上のストレスなどをお伺いします。可能であれば、1〜2週間の睡眠の記録(何時に寝て何時に起きたかなど)をメモしてお持ちいただくと、診察がスムーズに進みます。
もちろんです。不眠症は精神科で最も多い相談のひとつです。不眠の背景に精神疾患が隠れていることもありますが、不眠だけの方も多くいらっしゃいます。「精神科は敷居が高い」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、眠れなくてつらいという状態は立派な受診理由です。
市販の睡眠改善薬は抗ヒスタミン薬が主成分であり、連用すると効果が薄れやすく、日中の眠気やだるさの原因にもなります。2週間以上市販薬に頼っている場合は、一度受診されることをお勧めします。医療機関で処方できる薬剤は作用機序が異なり、より適切な選択肢をご提案できます。
不眠症の原因や状態によっては、自立支援医療(精神通院医療)の対象となる場合があります。自立支援医療が適用されると、医療費の自己負担が3割から1割に軽減されます。詳しくは診察時にご相談ください。
「過剰な眠気」過眠症の診療について
「一日中眠くて困っている、突然眠り込んでしまう」等を主訴とされる場合の評価・診断には、専門設備による精密検査(PSG検査、MSLT検査など)が必要です。
誠に申し訳ありませんが、当院ではこれらの検査を行うことができないため、過眠に関する診断・治療は行っておりません。また、過眠に対応する治療薬であるモディオダール等の処方もできかねますので、あらかじめご了承ください。
該当の症状でお困りの方は、睡眠専門外来や検査設備のある大学病院等へご相談くださいますようお願いいたします。
当院は完全予約制です。初診のご予約については「初診の方へ」のページをご覧ください。