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●統合失調症
統合失調症(Schizophrenia)とは
統合失調症は、生涯有病率が約1%(100人に1人)とされる精神疾患です。典型的には思春期後期から成人早期(10代後半〜30代前半)に発症し、思考、知覚、感情、意欲などの精神機能の統合的な障害を特徴とします。疫学的には男性での発症年齢がやや早く(18〜25歳)、女性ではやや遅い(25〜35歳)傾向がみられます。
症状は大きく陽性症状と陰性症状に分類されます:
陽性症状
- 幻覚:実在しない知覚体験(特に幻聴が多い)
- 妄想:現実検討力が障害された確信的な思考(被害妄想、関係妄想、思考伝播など)
- 思考の形式的障害:思考の連合弛緩、滅裂思考
- 行動の障害:緊張病症状、興奮、異常行動
陰性症状
- 感情の平板化:情動反応の減弱
- 意欲・発動性の低下(アパシー)
- アンヘドニア:快感喪失
- 社会的引きこもり
- 思考内容の貧困化
発症前には前駆症状として、不眠、集中力低下、軽度の思考障害、社会的機能の低下、性格変化、微妙な知覚変化(妄想気分)などが数週間〜数年にわたって現れることがあります。
病因については、脆弱性-ストレスモデルが広く支持されています。すなわち、神経発達学的・遺伝的要因による素因を持つ方が、発達段階における心理社会的ストレス(進学、就職、転職、転居、人間関係の変化など)に曝露されることで発症に至ると考えられています。病態生理学的には、ドパミン系機能異常を中心とした神経伝達物質バランスの障害が想定されています。
治療アプローチ
薬物療法
抗精神病薬による薬物療法が治療の中核となります。
- 第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬):
- リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール、パリペリドン、ブロナンセリンなど
- 陽性症状のみならず陰性症状にも一定の効果があり、錐体外路系副作用が比較的少ない
- 第一世代抗精神病薬(定型抗精神病薬):
- ハロペリドール、クロルプロマジンなど
- 陽性症状に対する効果は高いが、錐体外路症状などの副作用が出現しやすい
抗精神病薬の主な副作用として注意すべきものには以下があります:
- 錐体外路症状(パーキンソン症候群、アカシジア、ジストニア)
- 代謝性副作用(体重増加、高血糖、脂質異常症)
- 高プロラクチン血症
- QT延長などの心電図異常
- 過鎮静
副作用のモニタリングのため、定期的な血液検査、心電図検査、体重測定などを実施します。
精神療法・心理社会的アプローチ
薬物療法と並行して、以下の心理社会的アプローチを組み合わせることが推奨されます:
- 支持的精神療法:受容と共感に基づく治療関係の構築
- 心理教育:疾患や治療に関する正確な知識提供
- 認知行動療法:妄想や幻覚に対する認知的アプローチ
- 社会生活技能訓練(SST):対人コミュニケーション能力の向上
- 家族心理教育:家族の対処能力向上と再発予防
難治例への対応
治療抵抗性統合失調症(複数の抗精神病薬による十分な治療にもかかわらず改善が乏しい場合)に対しては、以下の選択肢があります:
- クロザピン:治療抵抗性統合失調症に対する唯一のエビデンスを有する薬剤
(当院では導入困難な場合、クロザピン登録医療機関へのご紹介も可能です) - 修正型電気痙攣療法(mECT):薬物療法で十分な効果が得られない場合の選択肢
(実施可能な医療機関をご紹介いたします)
地域連携による包括的支援体制
当院では統合失調症を単に症状の治療だけでなく、その方の人生全体を視野に入れた包括的支援を心がけています。精神保健福祉士が在籍しており、統合失調症の患者様の社会復帰と地域生活の充実を支援するため、訪問看護、デイケア、作業所(就労継続支援事業所)等の各種支援施設との連携も行なっております。生活や就労に関するご相談も遠慮なくお申し付けください。