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●月経前不快気分障害(PMDD: Premenstrual Dysphoric Disorder)
月経前不快気分障害(PMDD: Premenstrual Dysphoric Disorder)とは
月経前の約1週間に続く精神的・身体的な不快症状で、月経開始とともに症状がおさまるものを月経前症候群(PMS: Premenstrual Syndrome)と呼びます。その中でも特に精神的不快症状が重く、日常生活や対人関係に深刻な影響を及ぼす場合を月経前不快気分障害(PMDD: Premenstrual Dysphoric Disorder)と診断します。
主な症状
精神的症状:
- 著しいイライラや怒り
- 抑うつ気分、絶望感
- 不安や緊張感
- 情緒不安定
- 集中力の低下
- 食欲の変化(特に過食)
- 睡眠障害
身体的症状:
- 下腹部痛
- 頭痛、腰痛
- 乳房の張りや痛み
- むくみ
- 疲労感
- 発汗、のぼせ
PMDDは妊娠可能な女性の約5%が経験する症状で、月経周期を持つ女性にとっては毎月繰り返される辛い症状です。PMSに比べて精神的症状が顕著で、仕事や学校での能率低下、家族や友人との関係悪化など、生活の質に大きな影響を与えることが特徴です。
原因
PMDDの正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関連していると考えられています:
- ホルモン変動の感受性:性周期によって増減する黄体ホルモン(プロゲステロン)やエストロゲンの変動に対する脳の反応性の個人差
- 神経伝達物質の変化:特にセロトニン系神経機能の低下が関与していると考えられます。ホルモン変動によってセロトニンが枯渇し、気分の調節に影響を与える可能性があります。
- 遺伝的要因:家族内での発症リスクの高さから、遺伝的要素の関与も示唆されています。
- 環境要因:ストレスやライフスタイル要因が症状を悪化させる可能性があります。
診断
PMDDの診断には、少なくとも2回の月経周期にわたる症状の記録が必要です。症状が月経前(黄体期)に現れ、月経開始後数日以内に軽減または消失することが特徴的です。また、症状の強さが日常生活や対人関係に明らかな支障をきたしていることが診断の重要な基準となります。
当院では問診を通じて症状の内容や時期、重症度を詳しく評価し、他の精神疾患(うつ病や不安障害など)との鑑別を行います。
治療について
当院では以下のような治療アプローチを行っています:
薬物療法
選択的セロトニン再取込阻害薬(SSRI):
PMDDの第一選択薬として使用します。枯渇するセロトニンを補充する効果があり、月経前の精神症状を緩和します。
使用方法には2つのアプローチがあります:
- 間欠療法:月経開始2週間前から月経開始まで(症状が続く場合は月経開始後数日間)服用
- 連続療法:月経周期に関わらず毎日服用
PMDDに対するSSRIは一般的なうつ病とは異なり、比較的速やかに効果が現れることが特徴です。少量から開始し、症状をコントロールできる用量まで調整します。症状がおさまってから少なくとも1年間は服用を継続することが推奨されています。なお、妊娠中や閉経後は月経がないため、服用を中止します。
その他の治療選択肢
- 低用量ピル:ホルモン変動を抑えることで症状を軽減する効果があります。
(※当院では低用量ピルを処方しておりませんので、ご希望の方は婦人科にご相談ください) - 漢方薬:当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などが使用されることがあります。
- ビタミン・ミネラル製剤:カルシウムやビタミンB6の摂取が症状緩和に役立つという報告もあります。
PMDDは精神面の症状が重く、生活に支障をきたしている状況であることを考慮すると、期待される効果や起こりうる副作用(低用量ピルには血栓症のリスクがあります)などを検討した上で、SSRIによる治療が第一に考慮されます。
セルフケア
症状管理のために以下のような自己ケアも効果的です:
- 症状記録:月経周期とそれに伴う症状をしっかり記録することで、より効果的に症状に備えることができます。スマートフォンのアプリなどを活用して月経管理を行うことをお勧めします。
- 生活習慣の改善:
- バランスの良い食事(糖質の過剰摂取を避ける)
- 規則正しい睡眠
- 適度な運動
- ストレス管理
- カフェイン制限:カフェインがPMDDの症状を悪化させるという報告もあり、月経前はコーヒーやお茶などを控えることが推奨されます。
当院での治療について
当院ではPMDDに対して、詳細な症状評価と個々の患者さんの状況に応じた薬物療法を中心に治療を行っています。継続的な症状モニタリングと薬剤調整を通じて、月経周期に関連した精神症状のコントロールをサポートします。
PMDDでお悩みの方は、一人で抱え込まずにご相談ください。適切な診断と治療により、症状の大幅な改善が期待できます。