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●パニック障害(パニック症)
パニック障害(パニック症)とは
パニック症(パニック障害)は、自分ではコントロールすることができないパニック発作が何の前触れもなく突然起きることを特徴とする不安障害です。発作時には、激しい動悸、息苦しさ、発汗、ふるえ、頻脈などの身体症状が現れ、死ぬのではないか、気が狂うのではないか、という強い恐怖に駆られます。
パニック発作自体は、通常5~20分程度で自然に治まります。発作が収まると何事もなかったかのように普通の状態に戻り、心電図や血液検査などの一般的な医学検査を行っても異常は見つかりません。しかし、この体験は非常に恐ろしいものであるため、多くの方が以下のような二次的な問題を抱えるようになります:
- 予期不安:「また発作が起きるのではないか」という不安
- 広場恐怖:発作が起きた時に逃げ出せない、または助けを求めにくい場所(電車やバス、エレベーター、人混み、橋の上など)を避けるようになる
これらの症状によって日常生活に支障をきたす状態になると、パニック症(パニック障害)と診断されます。重症になると外出できなくなる(広場恐怖)こともあり、生活の質が著しく低下することがあります。
原因
パニック発作の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています:
- 生物学的要因:脳内の神経伝達物質(特にセロトニンやノルアドレナリン)のバランスの乱れ
- 心理社会的要因:ストレスや不安、生活上の大きな変化
- 行動的要因:身体感覚への過敏な注意や破局的な解釈(「動悸=心臓発作」など)
- 遺伝的要因:家族歴がある場合はリスクが高まる
何かしらのストレスをきっかけに交感神経が過剰に興奮し、それによってノルアドレナリンなどの神経伝達物質が過剰に分泌することで発作が引き起こされると考えられています。また、呼吸の乱れ(過換気)が症状を悪化させることも知られています。
治療について
当院では、パニック症の治療として主に薬物療法を中心に行い、基本的な認知行動療法的アプローチを併用しています。
薬物療法
パニック発作を抑え、予期不安を軽減するために以下の薬剤を用います:
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):パニック症の治療において第一選択薬とされています。効果が現れるまで2~4週間程度かかりますが、長期的な症状改善が期待できます。
- 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬剤):即効性があり、強い不安や発作時の症状を速やかに和らげることができます。ただし、依存性があるため通常は短期間の使用にとどめ、SSRIの効果が出るまでの間の補助的な役割として使用することが多いです。
薬物療法の効果や副作用には個人差があるため、定期的な診察を通じて適切な薬剤と用量を調整していきます。
認知行動療法的アプローチ
当院では、日常診療の中で基本的な認知行動療法的アプローチを取り入れています。具体的には以下のような内容について説明やアドバイスを行っています:
- パニック発作のメカニズムに関する心理教育
- 呼吸法などのリラクゼーション技法の基本的な指導
- 発作時の対処法の説明
- 不安を和らげる考え方のヒント
※なお、当院では詳細な評価に基づく構造化された本格的な認知行動療法プログラムは実施しておりません。より専門的な認知行動療法をご希望の方には、適切な医療機関をご紹介いたします。
自己管理のためのヒント
パニック症の症状管理には日常生活での工夫も重要です。以下のようなポイントを心がけましょう:
- 呼吸法の練習:ゆっくりとした深い腹式呼吸を習慣づけることで、発作時の過換気を防ぎます。
- 規則正しい生活:十分な睡眠、バランスのとれた食事、適度な運動は全般的な不安レベルを下げるのに役立ちます。
- カフェインやアルコールの制限:これらは不安を増強したり、睡眠を妨げたりする可能性があります。
- 段階的な行動拡大:完全に症状が消失するまで待つのではなく、少しずつ活動範囲を広げていくことが回復には重要です。
治療の見通し
パニック症は適切な治療を受ければ、多くの場合、症状の大幅な改善や回復が期待できます。当院では、薬物療法と基本的な心理教育・支援を組み合わせたアプローチで、患者さんの回復をサポートしています。
治療期間は個人差がありますが、多くの方は3~6ヶ月程度の治療で日常生活に大きな支障がない状態まで改善します。症状の完全な消失には更に時間がかかることもあります。また、症状が改善した後も、再発予防のために一定期間の治療継続が推奨されることがあります。
パニック症でお悩みの方は、一人で抱え込まずに早めにご相談ください。適切な治療によって症状は改善し、日常生活の質を取り戻すことができます。