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●不眠症(睡眠障害)
不眠症(睡眠障害):健やかな眠りを取り戻すために
皆さまは、毎日ぐっすり眠れていますか?睡眠は私たちの心身の健康に欠かせないものです。しかし、眠りたくても眠れない、眠っても疲れが取れないという方も少なくありません。そんな睡眠の悩みの代表的なものが「不眠症」です。
不眠症とは
不眠症は、睡眠障害の一つです。眠りたいのに眠れない、睡眠の質が良くないといった状態が続き、その結果として日中の生活に支障をきたすようになった状態を指します。国際的な診断基準では、これらの症状が週に3日以上、少なくとも3ヶ月間続く場合に慢性不眠症と診断されます。
具体的には、以下のような症状が現れることがあります:
- 日中の強い眠気
- 体のだるさや倦怠感
- やる気や集中力の低下
- めまいや頭の重さ
- イライラや気分の落ち込み
これらの症状によって日常生活や仕事、学業などに影響が出始めると、不眠症と診断される可能性があります。睡眠障害は単なる不快な症状ではなく、長期的には高血圧、糖尿病、心疾患などの身体疾患リスクの上昇や、うつ病などの精神疾患の発症とも関連することがわかっています。
不眠症の原因
不眠症の原因は複雑で、一つとは限りません。よくある原因として、以下のようなものが挙げられます:
- 心理的要因:ストレス、不安、うつ、過度の心配など
- 身体的要因:慢性的な痛み、呼吸器疾患、甲状腺機能異常など
- 薬剤の影響:向精神薬、降圧剤、副腎皮質ステロイド、一部の抗ヒスタミン薬など
- 生活習慣因子:カフェイン、アルコール、ニコチンなどの過剰摂取
- 環境要因:騒音、光、不適切な室温や湿度など
- 生活リズムの乱れ:不規則な睡眠習慣、交代勤務、時差ボケなど
- 加齢変化:加齢に伴う睡眠構造や概日リズムの変化
個々の患者さんでは、これらの要因が複合的に絡み合っていることが一般的です。特に不眠が長期化すると、「眠れないこと」自体への不安や過度の意識が新たなストレス源となり、症状を悪化させる悪循環に陥ることがあります。
不眠症の種類
不眠症は主に4つのタイプに分類されます:
- 入眠障害
寝床に入ってから30分以上経っても眠れない状態です。不安やストレスが原因となることが多く、不眠症の中で最も一般的なタイプです。過度な緊張や就寝時の心配事、考え事などが影響します。 - 中途覚醒
いったん眠りについても、夜中に何度も目が覚めてしまう状態です。再び眠りにつくのに時間がかかることもあります。身体的な不調や環境要因が関与していることが多いです。 - 早朝覚醒
予定の起床時刻よりも2時間以上早く目覚めてしまい、その後眠れない状態が続きます。高齢者やうつ状態の方に多く見られます。体内時計の乱れが関係していることもあります。 - 熟眠障害
十分な時間睡眠をとっているにもかかわらず、眠りが浅く感じられ、朝まで熟睡した感覚が得られないタイプです。睡眠の質の問題で、客観的な睡眠測定では異常が見られないこともあります。
これらのタイプは単独で現れることもあれば、複数のタイプが組み合わさって現れることもあります。
検査と診断
不眠症の診断は、まず詳しい問診から始まります。睡眠の状況、生活習慣、ストレス要因などについて丁寧にお聞きします。必要に応じて以下のような検査を行うこともあります:
- 睡眠日誌の記録:1〜2週間の睡眠パターンを記録することで、睡眠習慣の問題点を把握します
- 血液検査:甲状腺機能や貧血の有無など、身体的原因を調べます
- アクチグラフ:腕時計型の活動量計で睡眠-覚醒リズムを客観的に評価します
- 睡眠ポリグラフ検査:睡眠時無呼吸症候群など、他の睡眠障害の疑いがある場合に実施します
問診と検査結果を総合的に評価し、不眠症の種類や原因、重症度を判断します。また、うつ病や不安障害などの精神疾患が不眠の背景にないかも慎重に評価します。
治療について
不眠症の治療は、原因や症状に応じて総合的なアプローチを行います:
1. 睡眠衛生指導と生活習慣の改善
健康的な睡眠のための基本的な習慣を身につけることが重要です:
- 規則正しい睡眠スケジュールの確立(休日も含めて毎日同じ時間に起床)
- 朝の光浴と適度な運動(夕方までの軽〜中程度の運動が効果的)
- 寝室環境の整備(温度は26℃以下、湿度50〜60%、静かで暗い環境)
- 就寝前のリラックス法の実践(入浴は就寝の1〜2時間前がおすすめ)
- カフェインやアルコールの摂取制限(カフェインは午後以降避ける、アルコールは睡眠の質を低下させます)
2. 認知行動療法
不眠に関する考え方や行動パターンを改善する心理療法です。睡眠に対する不安や誤った信念を修正し、健康的な睡眠習慣を身につけていきます。以下のような技法を組み合わせて行います:
- 睡眠制限法:ベッドで過ごす時間を実際に眠れている時間に近づけ、徐々に延ばしていく方法
- 刺激制御法:ベッドと睡眠の結びつきを強化するためのルール設定
- 認知再構成法:睡眠に関する不適切な考え方を見直す
- 第三世代の認知行動療法:ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)、マインドフルネスなどの手法も効果的
研究によれば、認知行動療法は長期的な効果が期待でき、睡眠薬の減量・中止にも役立つとされています。
3. 薬物療法
生活改善や認知行動療法だけでは効果が不十分な場合、睡眠薬を使用することがあります。睡眠薬には以下のような種類があります:
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬:効果は高いですが、依存性や翌日の持ち越し効果、高齢者での転倒リスク増加などに注意が必要です。
- 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:ベンゾジアゼピン系に比べて副作用が少ないとされていますが、やはり長期使用には注意が必要です。
- メラトニン受容体作動薬:体内時計の調整に役立ち、依存性が低いのが特徴です。
- オレキシン受容体拮抗薬:依存性が低く、翌日への影響も少ないとされる新しいタイプの睡眠薬です。
また、不眠の原因や症状に応じて、抗うつ薬(トラゾドンなど)や漢方薬(酸棗仁湯、抑肝散など)を用いることもあります。
マイスリー(ゾルピデム)、ハルシオン(トリアゾラム)、フルニトラゼパム(サイレース・ロヒプノール)、デパス(エチゾラム)は、睡眠薬の中でも特に依存性が高く、高齢者の方々には特に転倒、せん妄等、様々なリスクを伴います。そのため、特別な事情がない限り、当院ではこれらの薬を処方いたしません。これらをやめたいけどどうしたらいいかわからない、とお悩みの方々は、ぜひご相談ください。
薬物療法は、可能な限り短期間での使用を原則とし、定期的に効果と副作用を評価しながら、必要に応じて減量や中止を検討します。
4. その他の治療法(当院では実施しておりません)
- 光療法:朝の光暴露や光療法器具を使用して体内時計を調整します
- アロマセラピー:ラベンダーなどの香りでリラックス効果を促進します
- マインドフルネス瞑想:ストレス軽減と睡眠の質の向上に役立つことがあります
当院での不眠症治療について
当院では、患者さん一人ひとりの睡眠の悩みに寄り添い、総合的な評価と治療を提供しています。薬物療法に頼るだけでなく、生活習慣の改善や認知行動療法的アプローチを組み合わせた、長期的な睡眠の質の向上を目指した治療を行います。
特に、長期間の睡眠薬使用でお悩みの方、依存性の高い睡眠薬からの切り替えや減量をご希望の方のサポートにも力を入れています。睡眠薬の減量・中止は、専門的な管理のもとで計画的に行うことが重要です。
重要なのは、一人一人に合った方法を見つけることです。私たちは、あなたが健やかな眠りを取り戻し、充実した日々を過ごせるようサポートいたします。睡眠に関する悩みは、体や心の健康に深く関わる重要な問題です。一人で抱え込まずに、ぜひ専門家にご相談ください。あなたに合った最適な睡眠のあり方を、一緒に見つけていきましょう。
厚生労働省が2023年に新しいガイドを公表しています。
とても参考になるので、興味のある方はご覧ください。