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●神経発達症(発達障害)

目次

神経発達症(発達障害)神経発達症(発達障害)とは

神経発達症(発達障害)は、生まれつきの脳機能の発達特性によって引き起こされる状態です。この特性により、日常生活や社会生活において様々な困難を経験することがあります。

誰にでも得意なことと苦手なことはありますが、神経発達症と診断される方々の場合、多くの人にとっては日常的で簡単な行為が、極めて困難であったり大きなストレスを伴うことがあります。一方で、特定の分野において卓越した能力を発揮することもあり、これも神経発達症の特徴の一つです。

神経発達症は必ずしも幼少期に気づかれるわけではありません。社会性がより求められる思春期や成人後になって初めて、困難さが顕在化するケースも少なくありません。そのため、診断には幼少期から現在に至るまでの詳細な情報が必要となります。

当院での診断アプローチ

当院では、問診と診察を中心に、以下のような情報を総合的に評価して診断を行っています:

  • 幼少期からの人間関係や学校生活の様子
  • 家族関係や養育環境
  • 具体的なトラブルや困難な体験のエピソード
  • 小学校や中学校の通信簿、成績表(持参可能な場合)
  • 過去に受けた心理検査の結果(ある場合)
  • 自己記入式検査(AQ、ASRS、CAARSなど)の結果

なお、当院ではWAIS-IVなどの複雑な心理検査を行える体制ではありません。より詳細な心理検査をご希望の方には、近隣の心理オフィスや医療機関をご紹介いたします。

診断の精度を高めるため、可能であればご家族に同席いただくことをお勧めしています。初診時には比較的時間をかけて評価を行いますが、再診は限られた時間での対応となりますので、あらかじめご了承ください。

治療とアプローチ

神経発達症には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、限局性学習症(LD)などが含まれます。これらは厳密には疾患というよりも、個性や特性の一種と考えられています。そのため、「治療」という考え方よりも、個々の特性に合わせた支援や適応を目指すアプローチが重要となります。

診断を受けることのメリットとしては、以下のようなことが挙げられます:

  • 精神保健福祉手帳の取得や診断書発行により、社会福祉制度を利用しやすくなる
  • 就労支援機関を活用できるようになる
  • 職場や学校での理解を得て、合理的配慮を受けやすくなる
  • 自分自身の特性を理解し、適切な対処法を学ぶきっかけになる

当院では主に診断と基本的な支援、必要に応じた薬物療法を行っています。専門的な心理療法や詳細な支援計画の立案については、状況に応じて適切な専門機関をご紹介します。

注意欠如多動症(ADHD: Attention Deficit Hyperactivity Disorder)

ADHDの特徴

ADHDは、注意力の散漫さ(不注意)、多動性、衝動性を主な特徴とする神経発達症です。症状の現れ方には個人差があり、不注意優勢型、多動・衝動性優勢型、混合型の3つのタイプに分けられます。

不注意の症状例:

  • 細部への注意の欠如、ケアレスミスが多い
  • 課題や活動に注意を持続することが困難
  • 指示に従えず、課題をやり遂げられないことが多い
  • 物の紛失、忘れ物が頻繁にある
  • 日常的な活動を忘れる
  • 物事の優先順位付けや時間管理が困難

多動性・衝動性の症状例:

  • じっと座っていることが難しい
  • 静かに遊んだり活動したりすることが困難
  • 過度に話し続ける
  • 質問が終わる前に答え始める
  • 順番を待つことが困難
  • 他人の会話や活動に割り込む

幼少期には多動性が目立ち、授業中に座っていられない、落ち着きがないなどの特徴が見られますが、多動性は思春期頃には落ち着く傾向にあります。一方、注意力の問題や衝動性は成人後も続くことが多く、就職後に仕事上のミスが頻発するなど、成人してから初めて気づくケースも少なくありません。

ADHDの治療アプローチ

ADHDの治療は、薬物療法と生活上の工夫を組み合わせたアプローチが中心となります。

薬物療法:
当院では以下の薬剤を症状に応じて処方しています(当院はコンサータ処方登録医療機関です)。

  • メチルフェニデート(コンサータⓇ)
  • リスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセⓇ)
  • アトモキセチン(ストラテラⓇ)
  • グアンファシン(インチュニブⓇ)

これらの薬剤は症状の軽減に役立ちますが、副作用や効果については個人差があります。定期的な診察を通じて、最適な薬剤と用量を調整していきます。

生活上の工夫:

  • スケジュール管理ツールの活用(手帳、スマートフォンアプリなど)
  • タスク管理の工夫(リスト作成、優先順位付け)
  • リマインダー設定(アラーム、メモなど)
  • 家族や周囲の理解と協力

当院では基本的な対処法についてアドバイスを行いますが、詳細な日常生活の支援については、状況に応じて地域の支援機関もご活用いただくことをお勧めします。

自閉症スペクトラム症(ASD: Autism Spectrum Disorder)

ASDの特徴

ASDは、発症頻度が約100人に1人とされ、男性の患者数が女性の約4倍と言われています。現時点で発症メカニズムは特定されておらず、複雑な遺伝的要因による先天的な脳機能の特徴と考えられています。

ASDの特徴的な症状は以下の通りです:

  • 対人コミュニケーションや社会性の困難さ(いわゆる「空気を読めない」)
  • 視線が合いにくい
  • 言葉の発達の遅れや会話の困難さ
  • 強いこだわりや柔軟性の乏しさ
  • 感覚過敏(音、光、触感など)
  • 同年代との交流の苦手さ
  • 興味の限局や熱中しやすさ

知的能力については個人差が大きく、平均的な知能を持つ人もいれば、知的障害を伴う場合もあります。ASDの症状は多くの場合、幼児期(3歳頃まで)に確認されることが多いですが、軽度の場合は成長後に気づかれることもあります。

ASDの支援アプローチ

重要なポイント: ASDそのものに対する治療薬はありません。薬物療法は、併存する不安や抑うつ、睡眠障害などの症状に対して行われることはありますが、ASDの中核症状を改善するものではありません。

当院では以下のような基本的な支援を行っています:

1. 診断と理解促進

  • 診断と特性の基本的な説明
  • ご本人やご家族への簡単な情報提供

2. 社会資源活用支援

  • 精神保健福祉手帳の取得支援
  • 障害者枠での就労に必要な書類作成
  • 自立支援医療の申請サポート

3. 併存症への対応

  • 不安やうつなどの二次的な精神症状への対応
  • 必要に応じた薬物療法

詳細な生活支援や就労支援については、地域の発達障害者支援センターや就労支援機関などの専門機関と連携して進めることをお勧めしています。当院では主に診断と基本的な支援、併存症状への対応を中心に行っています。

まとめ

神経発達症の診断と支援は、個々の特性を理解し、それに合わせた環境調整や支援を行うことで、その人らしい生き方を見つけていくことを目指します。早期発見・早期支援が望ましいですが、成人してからの診断や支援開始でも決して遅くはありません。

当院では神経発達症の診断と基本的な支援を行っていますが、時間的制約もあり、すべての支援を当院だけで完結することは難しい場合があります。状況に応じて地域の専門機関と連携し、総合的な支援を進めていくことをご理解ください。

診断についてご不安がある方も、まずはお気軽にご相談ください。適切な診断と基本的な支援を通じて、より良い生活への第一歩をサポートいたします。

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