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●認知症
認知症とは
認知症は、脳の神経細胞が減少する神経変性疾患や脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)により、脳の機能が低下し、日常生活に支障をきたした状態を指します。単なる老化現象ではなく、脳の病的変化によって引き起こされる症候群です。
代表的な認知症には以下のような種類があります:
- アルツハイマー型認知症(最も頻度が高い)
- レビー小体型認知症
- 血管性認知症
- 前頭側頭型認知症
認知症の症状は大きく2つに分けられます:
中核症状
脳の神経細胞の変化・減少によって直接引き起こされる症状です。
- 記憶障害(特に近時記憶の障害)
- 見当識障害(時間、場所、人物の認識が困難になる)
- 理解・判断力の低下
- 実行機能障害(計画を立て、順序よく物事を行うことが難しくなる)
- 言語障害(言葉を思い出せない、会話の理解が難しくなる)
行動・心理症状(BPSD)
中核症状に伴って、あるいは環境要因によって二次的に現れる症状です。
- 不安・抑うつ
- 徘徊
- 妄想(物盗られ妄想など)
- 興奮・攻撃性(暴言・暴力)
- 幻覚
- 不眠
- 食行動の変化
- 失禁・不潔行為
軽度認知障害(MCI)
正常な認知機能と認知症の間に位置する状態を「軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)」と呼びます。
MCIの方は:
- ご本人やご家族が、以前と比べて認知機能の低下を感じる
- 年齢や教育レベルの平均と比較して、認知機能の低下がみられる
- 日常生活は基本的に自立している(支障をきたすほどではない)
- 同じことをこなすのにより大きな労力を要するようになっている
MCIの段階で適切な介入を行うことで、認知症への進行を遅らせることができる可能性があります。
もの忘れと認知症の違い
加齢に伴う「もの忘れ」と認知症の「記憶障害」は、しばしば混同されますが、質的な違いがあります:
加齢によるもの忘れ
- 体験した事実自体は覚えている
- 体験の一部(詳細)を忘れる
- ヒントがあれば思い出せることが多い
- 日常生活に大きな支障はない
- 自覚があり、もの忘れを気にする
認知症の記憶障害
- 体験したこと自体を忘れている
- 忘れたことの自覚がない(記憶の欠落)
- ヒントがあっても思い出せない
- 日常生活に支障をきたす
- もの忘れの自覚に乏しいことがある
例えば、朝食のメニューを忘れても、朝食を食べたという事実は覚えているのが単なるもの忘れ、朝食を食べたこと自体を忘れてしまうのが認知症の記憶障害の特徴です。
受診を検討すべき症状
以下のような変化に気づいたら、専門医への受診をお勧めします:
- 何度も同じことを話したり、聞いたりする
- 約束を忘れてしまう
- 趣味や関心事に対して興味を示さなくなった
- 些細なことでも怒りやすくなった
- 通い慣れている道でも迷ってしまう
- しまい忘れや置き忘れが目立つようになった
- 身だしなみを気にしなくなった
- 自分でなくした物を「盗まれた」と思うようになった
認知症の検査・診断
認知症の診断は、以下の要素を総合的に判断して行います:
- ご家族からの情報(日常生活の様子、変化の経過など)
- 認知機能検査(HDS-R、MMSEなど)
- 神経学的診察
- 頭部画像検査(CT、MRI)
- 血液検査(甲状腺機能、ビタミン欠乏、感染症など除外可能な原因の検索)
当院では頭部画像検査は行っておりませんので、必要に応じて検査可能な医療機関をご紹介いたします。すでに他院で検査を受けられた方は、結果をお持ちいただければ参考にさせていただきます。
認知症への包括的アプローチ
認知症は現在の医学では完全に治癒することは難しい疾患ですが、適切な対応により症状の進行を遅らせ、生活の質を維持・向上させることが可能です。
薬物療法
- コリンエステラーゼ阻害薬:アセチルコリンという神経伝達物質の分解を抑え、脳内の濃度を高める薬剤
- NMDA受容体拮抗薬:神経細胞への過剰な刺激を抑制する薬剤
- BPSDに対する薬物療法:抑うつ、不安、興奮などの症状に応じた薬剤
これらの薬物は認知症を治癒するものではなく、進行を遅らせたり症状を緩和したりする効果が期待されます。また、副作用のリスクもあるため、個々の状態に応じた慎重な使用が必要です。
非薬物療法と環境調整
- 規則正しい生活リズムの維持
- 適度な運動や活動
- 社会的交流の促進
- 音楽療法や回想法などの認知症リハビリテーション
- 環境の調整(わかりやすい表示、安全な住環境など)
地域支援サービスの活用
認知症のケアにおいて最も重要なのは、患者様とご家族を支える体制づくりです。当院では以下のようなサポートをご案内しています:
- 介護保険サービスの利用支援(申請手続きのご案内)
- デイサービス、デイケア、ショートステイなどの紹介
- 認知症カフェなどの地域資源の情報提供
認知症の方は、認知機能が低下していても感情機能は活発に働いています。介護者の疲労やストレスは患者様にも伝わりやすく、互いの感情的な負担が増す悪循環になることがあります。適切な支援サービスを活用することで、患者様の状態改善だけでなく、ご家族の負担軽減を図ることも非常に大切です。
当院ではご本人の尊厳を大切にした認知症ケアを心がけ、ご家族も含めた包括的なサポートを提供しています。少しでも気になる症状があれば、お早めにご相談ください。