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●うつ病とは
悲しいことを経験したり、大きな失敗したりすれば誰しも気分は落ち込むものです。ただこの状態がさらに悪化し、物事に興味や関心を示さなくなる、気力が湧かない、集中力や注意力が低下する、自ら死にたいと思うようになる(希死念慮)などの心の状態がみられるようになります。さらに身体症状として、睡眠障害(眠れない、熟睡できない、眠り過ぎる 等)、倦怠感、食欲不振、頭痛、立ちくらみなども現れるようになります。このような症状が2週間以上続くとなれば、うつ病と診断されます。
うつ病の発症要因ですが、最も多いとされているのが環境要因です。具体的には大切な人やペットの死や離別による喪失体験をはじめ、人間関係のトラブル、家庭や職場での環境変化(引越、進学、就職、転職、転勤、異動など)をきっかけに起こることがあります。また責任感が強い、真面目(几帳面)といった性格の方にみられやすい傾向もあります。このほか遺伝的要因等で発症するケースもみられます。
なお気分障害を発症するメカニズムは現時点では特定されていませんが、脳内の神経伝達物質である、セロトニン、ノルアドレナリンなどのバランスが乱れることが関係しているのではないかと言われています。
●治療について
まずは十分な休養をとることが必要です。休息できる環境をしっかり整えたうえで、抗うつ薬による薬物療法も組み合わせていきます。主に使用される薬剤は、SSRI、SNRI、NaSSAで、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬が使用されることもあります。
笠原嘉先生によって提唱された小精神療法7箇条があり、とても大切なアプローチです。
(1) 感情障害という「病気」であって単なる怠けでないことを本人ならびに家人に告げる。
(2) 急性期にはできる限り精神的休息をとるよう指示する。特に発病間もないとき、できるだけ早く休息に入るのが有効なことを告げる。
(3) 薬物が治療上必要である理由を説明し、無断で服用を中止しないよう求める。
(4) 次第に精神的な苦痛は減っていくが完治には短くても3カ月、時には6カ月はかかることをあらかじめ告げる。
(5)治療中一進一退のありうることを告げる。したがって、治療途中で悪化するようなことがあっても悲観しないように、また特に終末期には理由のない短い気分動揺のあることを告げておく。
(6) 治療中自殺などの自己破壊的行為をしないことを誓約させる。
(7)治療が終了するまで人生上の重大な決断(たとえば自信がないという理由で退職するなど)をしないよう薦める。
(出典: うつ病臨床のエッセンス 笠原嘉 みすず書房)